「だいたいお前……百合菜ちゃんと今まで通りの関係でいいのかよ?」

「怖いんだよ、告白して振られたら今みたいに話すことだって出来ないだろ?」

きっと俺は百合菜ちゃんに振られても、百合菜ちゃんを嫌いにはなれないだろう。むしろ、ずっと好きなままだろう……。

話したいのに話せない。それだけは絶対に嫌だった。

「何かしら行動を起こさないと二人の距離は縮まりませんよ?」

美紀は、言う。

「例えば、小石を池に投げるじゃないですか?そしたら池には波紋が広がります。さて翔さん。何で波紋が広がったんでしょうか?」

「俺を馬鹿にしてるのかよ?小石を投げたからに決まってるだろ」

俺は当たり前だと言わんばかりに答える。

「正解です。だけど小石を投げなかったら静かな水面のままです。行動しなくては何も変わらないままですよ」

俺と渡は美紀の一言一言を噛み締めていた。おそらく渡も同じ気持ちだろう。

『何かしないと始まらない』

至極ありふれた言葉だが恋に迷う二人の男には十分効果はあった。