「翔くん?聞いてる?」

ふと顔をあげれば目の前に百合菜ちゃんの顔があった。

「わっ!!」

俺は思わず声をあげてしまった。まだ心臓の鼓動が止まらない。

「ご……ごめんね!」

百合菜ちゃんも顔を伏せてしまった。静寂な空気に教室が包まれた。どちらもなかなか声を出せない。

しかし、その時、沈黙を遮るようにしてドアが勢いよく開かれた。

「あれ!?翔だ!ってことは遅刻!?」

慌ててそいつは時計を見る。

「何だよ。まだ全然余裕じゃん。びっくりさせんなよ翔」

「俺のせいかよ?」

「おはよ雅也くん」

雅也はそこで初めて百合菜ちゃんの方を向いた。

「百合菜おはよっ。てかおれ邪魔者?」

「そ……そんなことないよ!」

顔を真っ赤にして否定する百合菜ちゃん。だけど気になるのはそこではなかった。

今、雅也……。さりげなく百合菜ちゃんのこと呼び捨てにしたよな…。

この二人ってそんなに仲良かったのか…?

た、確かにイケメンと可愛い子でお似合いの二人だけどな……。