「…馬鹿ね…桜花は…。何で今まで相談してくれなかったのよ……」

電話越しの声は微かに震えている。

「…ごめん。だけど…真実を受け入れるのが怖かったの…。私は…恋してるんだって…」

「恋するってのは悪いことじゃないよ?」

「初めてだから怖いの…何か…胸が締め付けられたり…さ…」

「私も…最初はそうだったよ?だけどね…勇気を出して告白したから…私は今…大好きな人の隣にいれるんだよ」

「葵…」

「好きな人には全力でぶつかっていく!!これ私のモットー!」

「好きな人には全力でぶつかっていく…?」

「うん!これホントに大事なこと!次の試験に出るからねっ?」

葵はそういうと悪戯っ子のように笑った。

「ありがと…葵。何か大分気が楽になったよ…」

「いーえ。桜花が溜め込みすぎただけなんだよ。明日はサボんないで来るんだぞ?」

「サボってないもん!」

「…お大事に」

「!…ありがと葵」

電話を切った後も私には葵の言葉の余韻が残った。

『好きな人には全力でぶつかっていく』

今日は久しぶりに良く眠れそう。

私はまだ昼だったにも関わらず、夢の世界へと落ちていった。