「どうだった?」

どうやら先輩に今の会話を聞かれてしまったらしい。

「…すいません!本当にすいません!!家にあったらしくて…」

私は正直に話すことにした。この先輩に嘘はつけない…。

「そっか…」

「本当にごめんなさい。私…私の勘違いで…。先輩が…」

あまりに悔しくて、申し訳なくて涙が出て来た。
自分の馬鹿さを恨みたかった。

「……これ使いなよ」

先輩はハンカチを貸してくれた。私はそれを無言で受け取る。

「まぁ…。さ…。あって良かったよ。無くしたらしゃれにならないもん」

「怒らないんですか?」

「ちょうど今日学校行きたくなかったから」

「嘘ばっかり…」

私は思わず笑った。

「もう大丈夫そうだね。じゃあ俺はいちよう学校行くね」

立ち上がり先輩は思い切り伸びをして言う。

「私は……今日は行かなくていいです。何か行く気分じゃありません」

「そっか…。じゃあ今度からは髪の毛巻くヒマがあったらコンタクトを付けてこなきゃね」

「あっ…先輩それひどいですっ!」

私達は笑い合った。そして先輩は学校に向かって歩き始めた。

「先輩!今日はありがとうございました!」

「俺何もしてないけど」

先輩はどんどん遠くなっていく。

「先輩!名前教えてくださいっ!」

「…若葉 翔」

それを最後に先輩の姿は見えなくなってしまった。