「殴るなんて聞いてないよ!!私が言ったのは、ちょっと冷たく接してって言っただけなのに…」

その日の帰り道。俺は開口一番に百合菜に叱られた。

「わりぃ…」

「翔君大丈夫だったかなぁ……」

百合菜は心配そうな顔を浮かべる。畜生…若葉がうらやましい。

でも確かにやりすぎた感はあるんだよな…。

明日謝っておくか。

「百合菜は辛くないのか?好きでもない男と一緒にいて」

俺は朝からずっと抱いていた疑問をぶつける。

「令志君には悪いけど…辛いよ。だけど…それでも翔君の事を悪く言われるのは嫌なんだ」

百合菜は力強い目で俺を見る。

「……俺は当分百合菜を離さないからな」

「たぶんすぐ終わっちゃうと思うよ」

茶目っ気たっぷりに百合菜は笑った。そんな百合菜の手を俺は軽く握った。

俺の手とは違って、とても温かった。