「素直に気持ちを表現できない自分が嫌なの」

百合菜はそう言って俺に愚痴をこぼす。

俺はそんな百合菜をそっと抱きしめた。

「令志君やめて?そんな気休め……いらない」

優しさで包んでるはずなのに…百合菜は泣き出してしまった。

「若葉何てやめて俺と付き合えよ百合菜」

「…無理だよ。私の心には翔君しかいないの」

俺の思いは届かなかった
分かり切っていたこと。
だけど…面と向かって言われると辛い。

「だけど…翔君の優しさが分かるまで付き合ってあげるよ?」

「はぁ?」

百合菜の思わぬ発言に俺は耳を疑った。

「翔君のこと悪く言う人がいると嫌な気持ちになっちゃうんだ」

「いいのか?俺が若葉の優しさに気付かなかったらお前は永遠に俺の彼女だぞ?」

「すぐ別れちゃうよ?」

そう言って笑う百合菜を見て俺は複雑な気持ちになった。

その瞳の奥に俺は写ってない。それでも…百合菜が俺のそばにいてくれる。

そんな偽りの幸せを俺は望んでいたのかもしれない。