現在、百合菜ちゃんの家への帰り道の途中だ。

「そっかぁ。やけにカップルが多いと思ったら今日ってクリスマスイヴ何だよね……」

百合菜ちゃんは感慨深げに言葉を出す。

確かに周りを見渡すとカップルが沢山いた。
どのカップルも幸せそうに手を繋いでいる。

「地球って広いよな」

「へ?」

「だってさ……。今日悲しいことが起こった人もいればさ、嬉しいことが起こった人もいる。今日一日の過ごし方は六十億通りあったってことだからね……?」

百合菜ちゃんは俺の言葉を理解しようと頑張ってくれていた…。

「翔君って難しいこと言うよね…?私分からないよ」

「ごめん…」

「肝心なのはさ…翔君は今……幸せなのか幸せじゃないのかってことだよね?」

幸せ……か。早苗さんと話したときを思い出す。
その人が幸せだって、言えばそれが幸せ……。

「……幸せじゃないよね。紫音が旅立った日だからなぁ…。変なこと聞いちゃってごめんね?」

「紫音と別れたのは悲しいこと。だけど今、百合菜ちゃんと一緒にいることは嬉しいことだよ」

我ながら何と臭いセリフだろう。俺はきっと耳まで真っ赤になっていたことだろう。

百合菜ちゃんは俺の手を握って小さな声で漏らした。

「私も嬉しいよ?」

雪がちらつく中、俺達は恋人通しのように帰って行った。