「い…今の演技か?」

渡が俺に駆け寄ってくる。俺は答える代わりに右手を上げて大丈夫であることを示した。

令志の奴、本気で殴りやがった…。話すのも辛い…。

「でも先輩方凄い演技でしたよ?さすがです」

桜花が尊敬の眼差しで俺と令志を見つめる。

「翔、昼飯食った後ちょっと付き合ってくれ」

真剣な令志のその迫力に俺は圧倒されていた。

「ああ……」

体は勝手に首を縦に動かしていた。

「よし!これで今日の朝の分の撮影は終わったから後は遊んでいいから」

雅也の言葉に皆は喜ぶ。

「お昼ご飯出来たよ?」

紫音と静香がお昼のカレーを持ってきた。

皆、撮影で疲れていたのかよく食べる。30分も過ぎれば鍋いっぱいのカレーは底をついてしまった。

皆が海で遊んでいるのを眺め俺は令志を待った。
話って何だろうな?

しばらくすると令志がやって来た。

「悪い。待たしたな」

「何の用だよ?」

「俺…昨日の夜に百合菜と別れたから」

わ…別れたって…?

「どーいうことだよ?」

「だから言ってんだろ?別れたんだよ」

「…理由は?」

「百合菜の好きな人が俺じゃなくお前だった…そんだけだ」

「令志…はそれでいいのか…?」

俺は意図したことではないが令志の好きな人を奪ってしまったことになる。

「……お前は俺が信頼してる男だ。大丈夫。それに百合菜はグーで攻める男よりパーで包む男のほうが好きだよ」

「……令志」

「百合菜のこと……頼んだぜ?親友」

俺と令志はニコッと笑い拳を合わせた。

「任しとけ」