「俺、お前のこと大嫌いだったんだよな」

令志は俺に言う。

「何が人に優しく振る舞うだ。そんなの偽善行為以外の何でもねぇ……」

「だからといって…何も考えずに力を振り回すのも間違っている」

「俺とお前は元々相入れないんだよ。百合菜は俺のものだ」

「百合菜は、ものじゃない。それにどっちと付き合うかも百合菜が選ぶことだ」

その言葉に令志はキレた。

「そういうスカシた態度が昔から気に食わないんだよ!」

令志はそう言い、俺との距離を詰めて拳を打ち込んで来た。俺は間一髪で避けたが、もし食らっていたら一たまりもないだろう。

「令志…やめろ。こんなこと百合菜は望んでいない…」

「俺は俺の信じる力を使うまでだ」

そう言い令志は容赦のない攻撃を浴びせてくる。

俺はそれをひたすらに避け続ける。自分からは手を出さない

「お前なめてんのか?避けるだけじゃ勝てないぜ」

「勝ち負けじゃない。俺は令志の優しさを信じてるから……」

「お前も甘い野郎だな」

令志は拳を俺に打ち込む。俺はそれを避けなかった。鈍い痛みが腹に残る。

「ぐっ…」

令志は虚を疲れた顔をした。まさか避けないとは思わなかったのだろう。

「殴ることで気が済むなら思う存分殴れ。俺は避けも反撃もしない」

すると令志は俺に向かって躊躇なく拳を振り下ろす。

「ぐっ……」

同じところへの二連撃は痛かった。衝撃が骨を伝わり脳を揺らす。

「とどめだ」

令志は倒れ込んでいる俺に拳を振り下ろした。

俺は咄嗟に目を閉じる。
しかし、いつまでたっても痛みは来なかった。

「初めから奪う気はなかったよ……」

令志はポツリと漏らす。

「最後の一撃は…不甲斐ないお前へのエールだ」

「令志……」

「大切ならしっかり掴んどけ。二度と離すんじゃねぇよ」

そういい俺と令志は握手を交わした。

「か、カット……!」

雅也が気を取り戻したかのように叫ぶ。