みんなの撮影は順調に進んでいるようだ。

おじいちゃんも カメラを持っているときは生き生きとしていた。

「翔、ケンカのシーンだけどな……」

「ん?」

俺がみんなのシーンをぼんなり眺めている所の横に令志は腰を下ろした。

「マジでやろうぜ」

「は?お前何言ってんだよ?」

俺は令志の言葉に耳を疑った。

「台本には、ただケンカしろとしか書いてない。どっちが勝とうがいいってことだろ?」

「そうだけどよ…」

「じゃあ楽しみにしてるからな」

それだけ言うと令志は何処かに行ってしまった。

令志、お前…何がしたいんだよ。友達とマジゲンカ何て俺はしたくないよ……。

「カットぉ!!よし、次はいよいよメインシーンじゃの!」

俺の気持ちも露知らず、おじいちゃんは俺と令志を呼んだ。

皆もこのシーンの撮影を楽しみにしてるのだろう

目が輝いている。

俺と令志は向かい合う。
だけど……目の前にいたのはいつもの令志ではなく、あの日……俺を躊躇なく殴り飛ばした令志だった。

「3、2、1スタート!!」

雅也の合図でシーンの撮影が始まった。