俺は帰る前に、雅也と図書室に寄った。理由は簡単だ。足が早くなる本を見つけるためだ。

「こんなの読んだって無駄だよ、翔。諦めろ」

「あのなぁ、負けられない戦いに仕立てあげたのは誰だと思ってんだよ?」

俺が雅也を睨むと、雅也は我関せずといった感じで、そこら辺にいた女子に話し掛け始めた。

「ったく……」

「あれ、翔先輩?何してるんですか?」

気付けば目の前に大量の本を抱えている桜花がいた。

「桜花こそ何してんの?」

「図書委員が図書室にいちゃダメですか?」

「あ、納得した」

桜花は重そうに本を机の上に置こうとしていた。一生懸命になってる姿がとても可愛らしかった。

「翔……先輩!見てないで助けてくださいよ!」

「はいはい……」

俺が桜花を手伝おうとした時だった。桜花がバランスを崩した。いや……自分から転んだ。

図書室に激しい物音が響いた。俺は桜花に覆いかぶさる形になってしまう。

「……お前ら何してんの?」

雅也が俺達を見て絶句していた。

「しょ……翔先輩が私を無理矢理押し倒して……」

桜花が頬を染める。

「ち、違う!!こいつが無理矢理……」

「翔先輩……強引ですね?」

周りからの目が冷たい。
このままでは俺が悪役だ。
俺は雅也を連れて、図書室から逃げた。背後から桜花の舌打ちが聞こえて来た。

結局、収穫は0だった。