その時、視界の隅に見覚えのある人影が通った気がした。


相変わらず、女の子はそばで立っている。



あたりを見回すと、広瀬先生が近づいてくるのに気づいた。



『お姉ちゃんは、これある?』



痛々しく腫れた右手を見せてくる。



その上にはアンパンマンシールが貼ってある。



私も小さな頃貼ってもらった記憶がある。



『私にはないよ。みーちゃんはいいね。』



『それならあげる。これ。』



そう言ってポケットに入っていたであろう、アンパンマンシールを渡してきた。


『大切なものでしょう?みーちゃんが持ってて。』



『いや!あげる。』



そう言って私の手をギュッと掴むと、とっさに離して離れていってしまった。