『なんではなのこと知ってるの?』


『実はお母さんと連絡をとったんだ。』


『なんで?』


『最近、来られてないようだったから。』


わざわざ連絡するなんて。


でも、本当は来て欲しくない。


一緒にいても心ここにあらずって感じだから。


自分の情けなさがより強調されるようで。


『いいんです。お母さんは忙しいから。私は大丈夫です。』


『うん。でもね、心が開ける人は大切だよ。』


『心が開ける?お母さんには心は開けるものなの?』


『違うの?』


だって血の繋がりなんて、戸籍上のものでしょう。


そこに愛情はない。


『わかりません。』


『変なこと言ってごめんね。広瀬先生や俺もちょこちょこ来るから。苦しくなったらナースコール押すこと。約束ね。』


頷く。


『できないなら、前の部屋に戻すから。』



おそらく看護師や医師が常駐するあの部屋。


釘を刺された気がした。


もう一度、強く首を縦に降る。


山瀬先生はそれを見て、苦笑いをする。


『今日はずっといるから、安心して休んでください。』


山瀬先生は優しい。


疑ってごめんなさい。


こんな私を気遣ってくれてありがとうございます。