四月

桜が舞うこの季節。


私は、高校生になる。



花の高校生…なーんて馬鹿みたいなことをいう人がいるけれど、実際そんなこともなく、私はただ学校から指定された制服に身を包み、学校の教科書がパンパンにつまったお気に入りのリュックを背負いながら鬼のような形相で片道1キロの道を歩いていたのだった。

「近いからといって高校を選んでみたものの…、まさかここまで坂道が続くとは想定外だった………、こんなことならもうワンランク上の高校にすれば良かった…。大体、なんだこの馬鹿みたいに続く坂道は…!!こんなところに学校を作らなければならない理由がどこにあると言うのだ……………。」


そんな恨みばかりが篭った独り言がつらつらと私の口から零れ落ちる。
周囲にいる生徒たち(恐らく同級生になるのであろう)は、私のことをまるではれ物を扱うかの様にそっと目を逸らしながら道を歩いていた。


「おーい、梨沙!」

そう呼び止められる声に私が振り返ろうとすると、呼び止めた男が私の隣に立っていた。


「よっ!お前もやっぱ梶高にしたんだなー!いやー、まさかお前もとは思わなかったぜー、なんてったって、お前歩くの嫌いだもんなー!!でもお前そこまで頭悪くないのになんでわざわざ梶高にしたんだよー??」


うるさい

ただひたすらうるさい。
でも仕方ない、こいつはこういう奴なのだ。

高嶋祐、私の小さい頃からの幼なじみ。
少し金髪が入った彼の髪の毛は、目にすると一瞬人を遠ざける。
しかし、彼の誰をも魅了する明るい性格は彼のパーソナルスペースを広げていっている。
簡単に言ってしまえば、とても明るい奴なのだ。


「祐、あんたは常に元気ね。その元気さ、私に分けてくれない?」

こんな嫌味だって、彼の前では


「いーぜ!!よーし!任せろ!!…………はぁ~~~!!!」


通用しない。

「相変わらず馬鹿……おっと、口が滑ったわ。楽しそうで何よりだわ」

「おい!今、馬鹿って言ったろー!!そんなこと言ったってなあ!俺だってこの高校行くんだから、学力は中の上だぜ!!へへーん!どーだ!!」

……………阿呆ね。
本質的なことを言った訳では無いのだけれど…。

そんな馬鹿(祐)と話しながら歩くと、気付けば高校は目の前だった。