……なんだ。



「俺、恵まれてるんだ…」



ボソッと呟いたはずの言葉は、
由利恵さんには聞き取れていたみたい。



「そうよ、恵まれてるし愛されてるわ。

ごめんなさいね、余計な話しちゃって…。
昴くんと夫が高校生の時と表情が似ててつい…」



「いえ……勇気、出ました」



父さんと、話す勇気。



由利恵さんは、またいらっしゃいと言って見送ってくれた。



……ちゃんと話そう、父さんと。



きっと……俺の知らないことも何かあるはず。