「歌音、忘れ物だよ!」
「あっ…」
「今日から新しい学校でしょ?
がんばれよ」
「うん。ありがとう祐君。」
「…眠くない?」
「大丈夫だよ!!
今日もめちゃめちゃ元気!!」
「いってきまーす」

これがいつも朝に交わす祐君との会話。
今日から私は新しい学校で生活していく。
(さぁ、転校初日頑張るぞ~。)
ふと、ネックレスにしている指輪に視線を落とす。
(手がかりも…見つかるといいな…)
「待ってくれ!!松倉くん!!」
辺りがシンとなった。
(えっ…?なに?)
辺りを見回すと、先生らしき人が生徒に怒鳴っている。
「どうして私がこの学校をやめなくてはならないんだ!?」
「気に入らない生徒や、教師をやめさせるなんて!!
許されることじゃないぞ!」
「は?俺だから許されんだよ。」
「なんなら、教師って仕事もやめとく?」
「それも俺には許されてんだけど?」
そういうと、彼は去っていった。
(何あれ…エラソーなやつ)
「…『魔王』…これで何人目かな…」
不意に、そんな言葉が聞こえた。
(魔王?)
「2年の松倉結城君っていったら有名な政治家の御子息だぞ…」
「あの先生も無茶するよな…」
「『魔王』に逆らったら潰されることくらいわかるだろうに…」
(なんって奴なの!?)
さらには、女子生徒
会話も聞こえてきた。
「『魔王』様って怖いけどカッコいいよね♪」
「ねーっ♪」
「ルックスも完璧だし…」
(…それは同感…。)
「ねぇ、邪魔。」
「どいて」
声がする方を向くと、『魔王』がたっていた。
私は、魔王の言い方がムカッとした。
「貴方がちょっとよけて歩けばいいじゃない!!」
そういうと、いろんなところからヒソヒソ話し声がした。
「なっなにしてんのあのこ…」
「魔王にむかって何てことを…!!」
「潰されるぞ…!!」
初対面で命令してくるやつに従いたくない!!
どんだけ偉いのか知らないけど
(絶対どいてやんない!!)
すると、魔王こと松倉くんが不敵に笑いながら近づいてきた。
「やめろ!!結城!!」
「…この子は今日きたばっかりの転校生なんだ許してやれよ…!!」
(キレーな女の子…いや、男の子?)
(助けてくれた…?)
松倉くんは、その男の子の言う通りに動きを止めた。
「若菜歌音さん?」
そういわれて私はハッとした。
「うっ…うん!!」
「俺は2年の槙和弥」
「クラス委員で先生から案内役を頼まれたんだ。」
「そ…そうなんだありがとう!」
思わず私は赤くなってしまった。
「へぇ…新入りなの」
「じゃあ、歓迎してやらないとね
今日のパーティーによんであげるよ」
「…パーティー?」
「そう、和弥も来るでしょ?」
「…あぁ」
私にはよくわからなかった。
「よかったね~歌音ちゃん?月に1度結城が開くパーティーには選ばれた生徒しか呼ばれないんだ。普通に一般生徒が来たくてもこれないんだから結城に感謝しなくちゃ♪」
「……」
「あれ?嬉しくないの?」
結城君が顔をのぞきこんできた。
「いかない!私やらなきゃいけないこといっぱいで忙しいから!!」
「なっ…!!冗談だろ?」
「冗談なんかじゃない!じゃ忙しいからこれで!!」
(あっ…槙君が来るならちょっといってみてもよかったかな…)
(くっ…でもいまさら言えない…)
「なんって生意気な女!」
「どうする?結城また、やっちゃう?」
結城は、微笑んだ。
「もちろん」