京子は、慎平の顔をまじまじと見、また、慎平も京子の胸元から今にも胸の谷間が見えそうで、見えなくて、いや、中学の同級生をそんな邪な目で見てはならないと、視線を京子の顔に戻した。




京子と目が合い、それはそれで、ちょっと恥ずかしくなり、目のやり場に困った慎平は、手に持っていた紙袋を京子に差し出した。




「東京バナナ。お土産」




まるで、要点だけをまとめた、受験対策のプリントのように、これだけのワードでこの紙袋の中身に何が入っていて、そして、それはどこで買ったもので、それを渡す理由まで込められている。




しかし、京子には、ただ緊張しているだけにしか聞こえていないのか、「なんでそんなにオドオドしとるん?」と笑って言い、紙袋を受け取った。




「ありがとね」




「ああ、大丈夫」




自分で言っておいて、何が大丈夫なのだろうかと慎平は、思ったが、それには触れず、京子は、「そうだ、車、停めたらいけんとこ停めとるけん、早く行こ?」と言い、慎平の腕を引っ張って、ロータリーのそばに止めてある水色のタントに走った。




「急いどったけん、掃除してないんやけど……」




と前置きをして、京子の水色のタントの助手席に乗り込んだ慎平だが、こういうことを言う人に限って、ちゃんと掃除されていることを知っていた。




がしかし、本当に掃除してないらしく、助手席の下には、小銭とレシート、ウェットティッシュが転がっていた。