車は、北条の方で一旦、ファミリーマートに入り、トイレ休憩を取った。




京子がトイレに言っている間に、慎平は、煙草を吸った。京子は、煙草を吸っていることに対して、やめたほうがいいとも、吸ったほうがいいとも言わなかったが、車内で吸ってないにしろ、多少不快ではないのだろうかと心配になった。




最近は、喫煙所が少なくなっている。しかし、煙草を吸う人は、まだまだ多いのが現状で、喫煙者のマナーが悪いのは、きっと喫煙所が少ないからだと思う。ゴミ箱がないところに、ゴミが散らばっているのと一緒だ。




しかし、そこに喫煙所があるということは、それを交換する人もいるということで、そう考えると、喫煙所を作らないほうが、人件費削減にもなる。




この難しい問題を慎平ほどの考えで解決できるものなら、きっと慎平よりも頭の良かった京子なんて女性初の総理大臣になれる。難しいことは、頭のいい人に任せようと慎平は思った。




「ねえ、ファミマの有線、クリスマスソングやったよ」




トイレから帰ってきて第一声がそれの京子は、ほんの少し、眠そうな顔をしていた。あれからずっとポルノグラフィティ・メドレー京子カバー.verのオンパレードだったのだ。無理もない。




もう松山まですぐのところなのだが、松山について、どこかで泊まったほうがいいんじゃないかと慎平は考えていたが、ホテルを予約するにしても、1部屋なのか、2部屋なのか____いや、常識的に考えて、それぞれが1部屋に入るのが普通なのだが、値段を考えると、1部屋でよくないかとも思ってしまう。




そのために、片方が寝て、片方が運転するほうがいいのだが、京子は、あの調子だ。欠伸していて、目がトロンとしている奴に運転を任せるのも酷だし、かと言って、慎平自身も、眠くないわけじゃない。




考えた慎平は、「車戻っといて」と京子に車のカギを渡して、レジの近くにあった「ブラックブラック」を買った。




しかし、京子は、助手席には座らず、運転席に座っていた。慎平は、運転席の窓をコンコンと叩いた。




「運転するん?」




「うん。そろそろ交代」




「いや、大丈夫なん? 眠そうやし」




「大丈夫大丈夫。今度は、慎平が休憩する番!」




そう言って、ピースサインをする京子に促され、慎平は、助手席に座った。




「それじゃ、行きますか」




そう言って、京子がドアポケット近くをいじった____慎平の横の窓がウイーンと開いた。




「……寒いんやけど」




「冗談、冗談」




そう言って、助手席の窓が締め、頬を二回叩き、車のハンドルを握った女性、名前を松山 京子という。




慎平の中学の同級生であり、慎平が惚れ直した女性である。