「ハネウマライダー」は、いつの間にか、「あなたがここにいたら」に変わっていた。言うまでもなく、ポルノグラフィティである。




慎平は、リレーの出発前に背中を押してくれたあの意味について、京子に聞いてみたかった。「なぜ、そんなことをしてくれたのか」と。




自分だけだったのか、他の人にもしていたのか、それはわからない。ただ、中学生が考えることは、大変に単純で、京子が自分のことを好きだったからじゃないかと考えてならないのである。




あの日の出来事を忘れたことはない。それほど慎平の今までの人生の中では、劇的で、当時、慎平は、京子のことを好きになっていた。




「ねえ……あの日のリレー、走る前に私がしたこと覚えとる?」




京子の方からその話を慎平に振ってきた。




「……もちろん、覚えとるよ」




「あれのおかげで本当に勝てたんかねーって今も考えるんやけど、実際、どうなんやろね……本当にあれのおかげなんかね?」




慎平は、迷わず言った。




「そうに決まっとるやろ」




「でもさー、それで勝てるんやったら、他の組が背中叩いても、勝っとったってことやろ? それに、そんな方法で勝てるんやったら、オリンピックでやれば、最強やない?」




慎平は、ここで「する方もされる方も気持ちがないと意味ない」と言おうとしたが、さすがに言えず、「そうやね」と言った。




もうすでに0:00を回っている。慎平にとって、この阿方公園で中学生の同級生と新しい一日を迎えたことは、一生の思い出になるだろう。