2走までが1位で、3走もおそらく1位だった。そして、ビブスを着た慎平がスタートラインに立とうとした時、




「慎平!」




と呼ぶ声が聞こえた。何事かと思い、しかし、走ってくる人も気になるので、慎平は、背中を向けて、顔だけは、前を向けていた。




「行ってこい!」




とドンッと背中が押され、その勢いでスタートラインに立ち、慎平はバトンを受け取って、走った。




しかし、すぐ後ろで相手を感じる。長い長い200メートルだった。それでも、慎平は一生懸命抜かれないように走った。思いっきり走った。




そして、ゴール手前になり、このままゴールすれば……というところで、バランスを崩し、慎平は、倒れこんでしまった。




ただ、それは、ゴールテープを切った後で、慎平のクラスは1位になったのだ。




慎平は、雄たけびをあげ、会場の盛り上がりも聞こえないくらい、喜んだ。




そして、その「行ってこい」と慎平の背中を押した少女、名前を松山 京子という。




慎平の中学の同級生であり、今、慎平の横で、鼻歌を歌っている松山京子という女性と同一人物である。