阿方公園の駐車場にバックで駐車できた頃には、車内のBGMは、「ドリーマー」から「ゆきのいろ」になっていた。どちらもポルノグラフィティである。




「ささ、行きましょ、行きまっしょ!」




とやけにテンションの高い京子は、車から出るなり、ダイソーで買ったボールをドリブルしながら「オーレオーレー♪」と走っていく。




その後ろ姿を見ながら、このタントがスマートキーであることを忘れて、カギ穴に直接、カギを差し込んで施錠した慎平も続く。




「ねえ、慎平、パスしよ?」




そう言って、京子は、慎平に向かって思いっきりボールを蹴り、そのボールは、高く上がって、慎平の横に生えている植木に乗る。もはやこれは、シュートである。




「どう? 上手いやろ?」




「その逆。下手過ぎ」




植木に乗ったボールを取り、京子に向かって、優しくパスを出すが、そのボールは、ダイレクトで慎平の横に生えている植木の上に乗る。




「ちょっとは、加減しろよ」




「うるせーやい! スポーツに加減もくそもあるかい!」




京子の言っていることには、一理あるのだが、これでは、傍から慎平は、ボール拾いにしか見えない。