角を曲がると、街灯がほとんどなく、今歩いたこの道よりも暗くなる。




「この道をさ、ゴミ拾いしながら歩いたこともあったよね?」




「そういえば、あったね。なんか、ボランティアとか言ってな。そういえば、俺、福祉かなんかの授業で、ここ、車いすで通ったこともあるわ」




「あー! あったあった。点字組とか、手話組とか分かれてやっとったよね。あれ、何やったんやろ……」




「さあ……」




経験した二人が思い出せないのなら、それは、もう闇に葬り去れた、授業であり、しかし、そんな授業を二人とも覚えているくらいだ、きっと思い出は、そういうものの方が鮮明に残るんじゃないだろうかと慎平は思った。




また、角を曲がると、今度は、街灯が一本もなく、真っ暗になる。




「ここ、よくこの時間に部活から帰っとったよね……」




京子の言う通りで、部活は、夜遅くまで延々とやっていて、終われば、この外周を歩いて帰る。今考えると、本当に真っ暗で、よくこんな道を「今日の晩飯なんやろ」とか「明日の集合時間何時やったっけ?」とか話しながら帰れたものだと、慎平は、当時の自分に敬意を払いたくなった。




「あ、そういえば、慎平ってチャリ通やった?」




「いや、俺、特別許可ももらえんかったけん、歩き」




「そうやったっけ。私は、チャリ通やったけん、赤のステッカーやったけど、あれ、チャリ通やない人って、何色やったっけ?」




「たしか、緑やったかな」




「じゃあ、特別許可は?」




「忘れた」




ちなみに、チャリ通とは、自転車通学のことで、学校から半径何キロのところに家があるかで決まる。ちなみに、慎平は、その範囲外だったので、歩きだった。しかし、道のりに換算すると、かなりの距離がある。先ほど行った市民の森が大きく、その市民の森を遠回りしないと家には帰れず、その分、道のりがかさんでしまうのだ。




そして、その道のりを配慮して、自転車通学ではないが、特別許可というものもある。ただ、これは、部活に入っていること、テスト期間中で部活がないときは、歩くことなどの制約がある。




慎平は、それすらギリギリもらえず、今では、ダサいと思っているヘルメットをかぶって国道196号線沿いの坂を下りて自分を追い抜いていく、自転車通学の人が羨ましく、そして、虚しい思いをした。




ちなみに、里中も同じ歩きである。今思えば、里中も同じだったことから、慎平と一緒に帰ることになり、遊ぶようになり、親友になったのだと思う。