「今治……今治って言ってもねー、今、おるここが今治やけんねー」
京子の言うことは、尤もで、具体的な名称は無いものか、慎平は考えた。
一つ、思い浮かんだ場所があった。
「あそこは? 市民の森」
「市民の森? なんで?」
「なんで?」と問われると、言葉に詰まるが、中学の下校中、よく里中と意味もなく市民の森で話し込んでいて、急に懐かしくなったからだが、「それなら里中と行けばいいやん」と言われてしまっては、それまでだ。
「まあ、いっか。私にとっては、珍しくも何ともないけど、よく考えたら、慎平にとっては、懐かしい思い出の地ってことにもなるんよねー」
そうしみじみと京子が言い、とりあえず、最初の行き先が決まった。



