「ごめんごめん、それ、後ろにポンってやっといて」




シートベルトを締めながら言う京子の言う通り、慎平は、ウェットティッシュを後ろの座席のポンッと投げ、小銭は、ドアポケットに、レシートは____。




「ああ、それならそこにあるビニール袋に捨てといて」




と、京子が指差す、シフトレバーにかけられたビニール袋に捨てて、車は、動き出した。




慎平は、車に乗るのは、久しぶりだった。東京にも車は走ってはいるし、免許も持っているが、運転する機会がないくらい、電車で間に合うし、駐車場も馬鹿にならないくらい高いのだ。




その久しぶりのドライブを中学の同級生である、京子とするのは、どうも変な感じである。京子とは、中学時代に自転車を並走させて遊びに行ったことがないのも理由の一つだが、中学以来の再開した京子が自分と同じように大人になっていて、しかも、中学の時と変わらない接し方をするので、それが慎平の中の「違和感」になっている。




「お腹空いとる?」




「まあ、多少……」




どうも、京子の方は、慎平のように「違和感」を感じている風ではなさそうで、シガーライターのソケットに繋がったウォークマンを信号待ちにいじっている。




流れてきた曲は、ポルノグラフィティの「ヒトリノ夜」だった。




「まだ好きなん? ポルノ」




「さっきの待合室でも聴いとったよ」




「そうなんや。あっ、そういえば、コナンの映画の主題歌、歌っとったよね? なんて名前やったっけ……」




「オー!リバル?」




「そう、それ! あれ好き!」




そして、この会話の後の信号待ちで京子は、ウォークマンをいじり、水色のタントのBGMは、スシローに着くまでずっと「オー!リバル」だった。