記憶のその先

その男は誰かと電話しているようだ







〈あぁ、わかってる。すぐにやる。逃しゃあしないさ、あぁ、あぁ、承知。〉







なんの話だろう







まぁいっか







その茶髪の男は電話を終えたようか屋上を出て行く








ジャリ







しまった!足が動いて音が鳴ってしまった…








〈誰だ〉







男がこっちに来る








やばいよ〜どーしよう…






〈お前、誰だ〉







見つかってしまった…







久しぶりに家族以外の男と話すので







声が出なかった







男がしゃがんでいる私の腕を掴もうとしてきた






ガシッ







〈誰だって言ってんだよ〉







触れられたの拒否反応と恐怖で体が震える







「………わ………わたし…は……」







〈あ?〉







すると突然







〈俺の女に汚ねぇ手で触んな〉







殺気の混じった低い声が聞こえた






それはなんと、黒夜だった