次の日は土曜日。
奏とは小学校で待ち合わせをした。
約束の10時ぴったりにいつも通りの笑顔で現れた彼。
いつもこの笑顔だった。
眩しすぎるくらいのこの笑顔から、いつも目を背けた。
もう目は背けない。
今度は、私が受け止める番だ。

「奈央、待たせたよね。ごめん。」

「ううん、時間ぴったりだよ?奏らしいね(笑)」

「ならよかった(笑)…どうする?ここで話す?」

そう言って、2人で体育館の前の階段に腰掛ける。

「奏。私ね、あれから本気で奏のこと考えたよ。京弥のことも。それでね、気持ちが決まったの。」

頷きながら、聞いてくれる彼。
思い返せばいつもそうだった。
私は彼の話に、こんなに相槌を打ったことがあったかな?
いや、これからはしていくんだ。

「奏…こんなに長い間、待たせちゃってごめんなさい。片想いの辛さは、誰よりも分かってたはずなのに…辛かったよね。私、奏と向き合いたい。私でよければ、もう1度チャンスをくれませんか?」

言い終わらないうちに、視界が消えた。
ふわっとした暖かみ。懐かしい匂い。

「ありがとう。ずっと、待ってた。前よりももっと大切にするから。ゆっくりでいいよ。俺を好きになってください。」

そう言いながら、優しく抱き締めてくれる奏。
この人の気持ちに、私は応えたい。