結局、爽くんと私は一曲も歌わずに
カラオケを出た。




っていっても愛達はまだカラオケ中。




爽くんが実験が終わったら
つまらなそうな顔をして




『俺ら、もう帰ろーぜ。』



と私を引っ張ったから2人で
先に出たんだ。




ほんと自由な人だなぁ。




でもほんとはすごく嬉しい。
今、爽くんと2人っきりで。



もうこのまま帰っちゃうのかな。





なんて思いながら隣の爽くんを
見上げると




爽くんはそれに気づいたように
私を見下ろした。




『美月、だったよな?名前』



突然そんな事聞かれたから
うんうんと、頷くことしかできない。






『や、別に忘れてた訳じゃねーけど、
周り、お前の事やぎって呼ぶじゃん?
だから美月って名前で合ってるか
不安になって、、』






………嬉しい。



だって下の名前で呼んでくれたのは
爽くんが初めてだったから。




私の名前 八木 美月 だから
みんな呼びやすい八木をとって
私のことをやぎって呼んでいる。




でもほんとはみんなみたいに
名前で呼んで欲しかった。




『ありがと。爽くん、覚えててくれて。
美月って呼んでくれるの爽くんしか
いないよ』





この際、爽くんだけでいい
私のことを美月って呼ぶのは。




『美月、家この辺?』



『あ、ううん!電車で二駅行ったとこ。』




私は家の方角を、指さして
爽くんに伝える。



爽くんはふんふん、と呟いて





『じゃあ、優馬知ってんの?』




って私を見下ろした。