知里に向かって話している遊実に…




「…はよ!」





ダメだ…

顔を見て言えなかった…





イスに座ると同時にチャイムが鳴る。





その音と、周りが一斉に席に着き始めた音で、小さな声で「おはよ… あの…」と言われたことに気付かなかったんだ…






******


昼休み。



弁当を持って体育館に来た。



朝のあいさつを無視されてから、話しかけられなくて今に至るオレ…




「昨日のこと考えてたら、寝られなくて…

テスト中もボーッとするし、後ろは気になるし…

まさか、一桁なんて…」



弁当の卵焼きをつつきながら、智哉にグチる。



「まっ、やってしまったことを後悔しても仕方ありません。

大也センパイに、キチンと話してください」



誰が聞いているかわからない体育館では、王子様口調。



やっぱ、そーだよなぁ…



遊実のことも気になってたけど、大也センパイに怒られるのも避けたかったなぁ…




「遊実にも、あいさつ無視されたし…

嫌われたんだよなぁ…」




「はぁっ?!

何?!」



ビックリ顔して、素の声を出す智哉。


弁当の手を止めた。



「だから、朝、声かけたのに無視されたんだって!」


「え…?

遊実、あいさつ返していたけど?

なんか言いたそうな顔してたけど、翔平が無視したのではなかったのですか?」




えっ?!



返事してくれてたの?!



オレが遊実のこと無視するなんてありえない!!





オレが気付かなかっただけ?!



つつきすぎてボロボロになった卵焼きと残りの弁当をかきこんで



「オレ、サボるから!

補習でどーせ怒られるんだから、昼休みも行かなくてもいいだろ?」



荷物を持って、体育館を後にした。