体育館に行くと、何やら騒々しかった。



「静香センパイ!」



慌てて駆け寄る高梨さん。



その前には、智哉が鋭くセンパイらしい人を睨みつけていた。




人前では、王子様の仮面をかぶってるから、そんな姿を見せるなんてただ事じゃない!





一悶着がすみ、残されたオレと相川さん。



「王子様キャラ崩壊してたね!

大丈夫なのかなぁ?」




えっ?



王子様キャラ?



高梨さんにはバレてるとは聞いてたけど…




「知里は、一人で抱え込めるタイプじゃないから!

面白ネタが増えて、高校生活楽しくて!」




ニコニコ語りかけてくる姿が、また可愛くて。



「どう思った?」


「ん?

王子様じゃないときの顔を見てみたい!


知里の話じゃ、最低人間らしいから!」




相川さん、智哉に興味があるんだ…




やっぱ、オレじゃダメだなぁ…



苦笑いした顔を勘違いしたのか


「あっ、ごめん…

友達なのに…」


シュンとした。




「気にしないで!

そんなこと言うの高梨さんらしい!

もうすぐバスケの試合始まるね!場所どこにしようか?」



智哉なら仕方ない…そう自分に言い聞かせて、試合を見られそうな安全な場所に移動する。





「おい! 翔平!」

突然、智哉の声がした。



「あれ? どーした?」



さっき、高梨さんたちと行ったんじゃ?



眉間のシワは戻ってない。



相当怒ってるな…



隣にいるのは相川さんに気付いたのか、腕を引っ張られ耳元に顔を寄せられると



「バスケに出るぞ!」



えっ?



「ヤダよ!」



即答だった!


だって、せっかく相川さんと見られるのに…



「貸し【42】、全部チャラ」


「ムリ!」


いつの間にかまた、増えてる!


借りは返したいけど、今は相川さんを取りたい!



チラリと相川さんを見ると、不思議そうな顔をしてこっちを見てた。


ニッコリ笑って、智哉を見ると「はぁ…」とため息をつかれた。



「わかった…

今度、相川さんとデートできるように協力してやる…

これでどーだ?」



「やる!」


オレってこんなに単純だった?



相川さんが、智哉のこと好きでもいい!



オレは、相川さんといられるだけでいい…