今日を生きているという事実と、今ここに立ってちゃんと歩けているということ。
拳をギュッと握り締めると少し痛い。
良かった……あたし、今日もちゃんと生きてる。
あたしがあたしでいられる幸せ。
全身でそれを感じることが出来ることを、忘れたくない。
足や腕が思った通りにちゃんと動いて、息が出来ているということ。
無意識にやっているような動作のひとつでも、あたしにとってはかけがえのないことなんだ。
バス停に着くと、バスはすぐにやって来た。
5人ほど並んでいたけど、中は混雑しておらず空いた席に腰かける。
バスで10分ほど走ったところにある大きな病院が、あたしの目指していた目的地。
「ありがとうございました」
バスの運転手さんにお礼を言ってバスを降りると、それを見計らったかのように雪が降って来た。