5月に入って一段と暖かくなって来た今日この頃。
「菜花、今日は病院の日だから」
朝、制服を着てリビングに行くとお母さんにそう言われた。
お母さんは今日も、やっぱり朝から忙しそう。
「病院?なんで?」
ダイニングのイスに座って、キッチンに立つお母さんに首を傾げる。
「なんでって……菜花、覚えてないの?」
戸惑うように瞳を揺らすお母さん。
最近、お母さんはよくこんな顔をする。
……琉衣と同じ顔だ。
あー、きっとまた変なことを言っちゃったんだ。
お母さんの顔がたちまち切なげに歪んで。
変なことを言ってしまったことを後悔した。
「菜花は脳に腫瘍があるの。それの経過をみるために今日は病院に行くのよ」
腫瘍……。
何ソレ。
知らないけど、お母さんがこんなウソを言うはずがない。
そっか。
あたし……そうだったんだ。
最近穴が開いたみたいに、ポッカリ記憶がなくなっていることがある。
また……忘れちゃってたんだ。



