振り向くと、そこには頬を緩めてあたしを見下ろす琉衣の姿があった。
「よう。朝から何やってんだ?」
「あ、うん。おはよう。桜が綺麗だなーって思って」
「ん?桜か。確かに桜のピンクって落ち着くよな」
琉衣が目を細めて笑った。
あたしまで嬉しくなって自然と笑顔になる。
同じものを見て綺麗だなって言い合えることが、すごく幸せ。
「河川敷の桜並木もね、今すっごい綺麗なんだよ。ピンク色の絨毯が、どこまでも広がってるような感じでさ!琉衣にも見せてあげたい」
琉衣の目を見てニッコリ笑う。
すると琉衣は一瞬だけ悲しげな顔を見せた。
それがなぜなのか、あたしにはわからない。
もしかしたら笑っていただけなのかもしれないけど、胸がざわざわした。
「そうだな……また一緒に見に行こうな」
「う、うん……!」