だって、キミが好きだから。



チロルチョコじゃなくて、ちゃんとした物を。


手作りだと期待させちゃうから、他の子みたいに市販の可愛いチョコを買って。



でも……でもっ。


あたしには……やっぱりそれは許されない。


唇をギュッと噛み締める。


チョコを渡しちゃったら、あたしの想いまで溢れちゃいそうだから。


渡したい気持ちを堪えて臨んだバレンタイン。


ホントは何日か前から意識してたけど、あたしには関係ないイベントだと決めつけて考えないようにしてたんだ。


だから、最後まで突き通さなきゃ。



「る、琉衣の彼女じゃないんだし……手作りなんてムリだよ」



胸がキリキリ痛んだ。



「ああ……そうだな。お前は俺のことを、何とも思ってねーもんな」



どこか切羽詰まったような苦しげな声に、胸が張り裂けそうなくらい痛い。



「わーってるよ……ちゃんと。変なこと言って、困らせて悪かったな」



きっと……傷付けた。


それがわかるからツラい。


吐き出してしまいたくなる。


……本当の気持ちを。


ホントは琉衣のためにチョコを選びたかった。


他の子と同じように、食べてくれるかな?ってドキドキしながら選びたかった。


こんな風に傷付けたかったわけじゃない。


ツラそうな顔をさせたかったわけじゃない。



「ち、違うよ……そうじゃない」



ダメだよ。


何を言おうとしてんの、あたし。



「違うって……何が?」



頭の中でサイレンが鳴る。


ダメだ、ダメだよ。



「る、琉衣のこと……好きだから」



声にした瞬間、胸の中で必死にせき止めていたものが溢れ出した。