本命チョコなんて、用意してるわけないじゃん。
でもまさか、琉衣に催促されるとは思わなかった。
チョコ……苦手なんじゃないの?
「じゃ、じゃあ……これ、あげる」
売店に寄った時に買ったチロルチョコをカバンから3個取り出し、琉衣の手に置く。
本当は昼休みに萌奈と食べようと思って買ったやつだけど、いいよね。
またあとで買いに行こう。
「なんだよ、これ」
顔を見なくても、声を聞くだけで琉衣がスネたような顔をしているのがわかった。
かなり不機嫌な声だもん。
「チロルチョコだよ。美味しいから食べてみて?」
「本命っつったら、手作りとかだろ?」
「…………」
じっとり責められるような視線を感じて、顔を上げることが出来ない。
手作りって……。
それこそ用意してるわけないじゃん。
って……チョコくらい、何も考えずに渡せば良かったかな。
今までたくさんお世話になったことを忘れたわけじゃない。
本命チョコだとは言えないけど、今までのお礼だとか何とか適当に言って渡せば良かったのかも。



