だって、キミが好きだから。



キョロキョロしながら辿り着いた桜の木の下。


あたしを呼び出した主は、まだ来ていないみたい。



ビューと吹く風に身を震わせながら、落ち着かないまま立っていた。


見上げればそこには、葉が散ってしまって枝だけになったスカスカの桜の木と青い空。



空はこんなに澄んでて綺麗なのに、枝だけの桜の木はなんだか寂しげで。


なぜだかわからないけど切なくなった。



ねぇ……キミは。


春になるのをじっと待ってるの?


寒い寒い冬を耐え抜いて、春にはピンク色の綺麗な花を咲かせるんだね。



手を幹にピタッと当てると、信じられないほど冷たかった。



ーーザッザッ


砂利の上を歩く足音が聞こえて、鼓動がドキッと高鳴った。


き、来た……?



「遅れて悪い」



えっ?