あたしには……恋をする資格なんてないんだから。
いやいや。
どう考えても、やっぱりそんなことは絶対にありえない。
だってあたしは地味だし、矢沢君みたいに目立つわけでもないもん。
可愛い子は他にいくらでもいるのに、あたしを好きだなんてそう考える方がおかしいんだ。
別に矢沢君を好きなわけじゃないし。
ただ、カッコ良いから目が合ったらドキドキするだけ。
ただ……それだけ。
いろいろ考えていると、あっという間にお昼休みがやって来た。
「菜花ー、食べよう。もうお腹ペコペコだよ」
いつものように萌奈がお弁当を持ってやって来る。
そして、あたしの前の席のイスに座った。
「ごめん。これから行くとこあるから、今日は別々でいい?」
「えっ?どこ行くの?」
「あ、うん……えっと。職員室!」
「えー、そうなんだぁ。わかった」
残念そうに眉を下げる萌奈。
……ごめんね。
ウソついちゃった。
言えないことがどんどん増えて行く。
これまで隠し事をしたことなんてなかったのにね。
真冬の中庭は凍えそうなほど寒くて、当たり前だけど人っ子ひとり見当たらない。



