「カグヤ…と,名前で言ってください。
姫だから,とかは嫌なんです。
特別扱いも,ものすごく嫌。
だから,これからは,カグヤで…。」

そう言ってから,一礼した。

「あと,レオン。
あたし,まだこの国の事が分かんなくて不安なの。
話し相手がいないと,とても寂しいわ。」

演技が下手なカグヤは,本を読むような棒読みだ。

「だから,日本の事を知っているあなたに,お世話係をして欲しいの。
昨日の事を悪いと思っているのであれば,あなたは,お世話係として償いなさい。」

ものすごい棒読みに,レオンは吹き出しそうになった。
それと同時に,嬉しくて嬉しくて,目頭が熱くなる。

「返事は?」

カグヤの問いに,笑顔を作り,大きく頷いた。

啜り泣く音がして,フッと視線をドランに向けると,ハンカチを目に押し当てていた。

「ふー!じゃぁ,この席は,レオンに返すわ。
やっぱり,あなたじゃなきゃ…ね?」

ニコニコしながら,ラビーは立ち上がる。
そして,レオンを無理矢理立たせ,カグヤの前の席に座らせた。

照れたように頭を掻くレオンを,カグヤは笑った。