「姫,そんな格好で廊下を歩いて…
しかも裸足じゃないですか!」

急いでたから気付かなかったが,カグヤの格好は,白いパジャマに,裸足だ。

「レオン!部屋に何かがいるの!」

カグヤが,自分の部屋の方を指差しながら叫んだ。

「わかりました。落ち着いてください。
姫は,俺の部屋にいて…。俺は,姫の部屋を見てきます。」

カグヤは,コクンと頷いて,レオンの部屋に入った。

「おとなしく待っててくださいね!」

レオンは,そう言ってドアを閉めた。

カグヤは,その場にしゃがみ込んだ。

カサカサカサって音が,嫌な思い出を蘇らせる。

黒くて,気持ち悪くて,飛ぶ生き物。
ゴキブリだ。

カグヤは,オバケや幽霊は怖くないけど,ゴキブリだけは無理なのだ。

思い出しただけで,体が震える。