落ちてきた天使

「っ、な……っ‼︎」



何よこの人…


勝手に自殺願望者だと勘違いされた挙句、女として終わってるだなんて。


勘違いはまだ仕方ないにしてもだよ⁈
普通、そこまで初対面の仮にも女性に言うかぁ⁈



乱れた髪を掻き上げる男性。


見たところ歳は20代後半から30代前半ってところだろうか。


顔は整ってる。誰がどう見たって美形って言うだろう。


体型もいい、服のセンス、着こなしも抜群。
外見は文句の付け所もないほど完璧だ。



でも、中身は絶対に最低最悪だと思う。


言葉遣いも悪い。
初対面の人にあんな暴言を吐くんだから。



すました顔なんかしちゃって、ホントありえない。


ちょっと顔が良いからって何言っても許されると思うなよ。


頭の中で悪態をつくと、私は気を落ち着かせるためにゆっくりと息を吐いた。



「それで?お前怪我はーー」

「さっきは助けて頂いてありがとう御座いました。不本意ながら感謝はしてます」



男性が何か言い掛けたけど、これ以上この人と関わりたくなくてわざと言葉を被せた。


しかも“不本意”を強調して言うと、男性は案の定「あ⁇」と眉を寄せた。



ふんっ!睨んだって知らない!


本当はお礼なんて言いたくない。


だけど、危ないところを助けてもらったのは変えることの出来ない事実だし、人としてお礼を言うのは当然のことだから言うまで。



「あと一応言っておきますけど、私は飛び降りようとしたわけではありませんので」

「お前、それが助けてくれた人への態度か?」

「別に助けてくれってお願いしてません。寧ろありがた迷惑です」

「は?ありがた迷惑って何だよ」



男性は一段と不服そうな顔をする。
声なんて私に対する苛立ちがはっきりと現れている。



「あなたみたいな人に借りが出来てしまいました」