落ちてきた天使

「さ、つき…?」


一体何がどうなってるの?


皐月は怒ってたんじゃないの?


どうして私は抱き締められてるの?



てっきり怒ってるもんだと思ってたのに、真逆の皐月の行動に戸惑いを隠せない。



「…止まるかと思った」

「え?」

「心臓。お前が何処にもいなくて……マジで止まるかと思った」



そう言って、皐月は抱き締める腕の力を強めて、私の首元に顔を埋めた。


サラリと頬に触れる皐月の髪。


首元に感じる熱い吐息。


気にならない程度の汗の匂い。


隙間なんてないぐらい引き寄せられて、皐月の高くなった体温も加速した心臓の鼓動も直に伝わってくる。



「もしかして……探し回ってくれてたの?」



さっき外で私を見つけてくれた時、息が上がっていた皐月を思い出す。


スラクッスにワイシャツ姿のまま、髪が乱れ、スマホ片手に。


周りなんて目に入ってないんじゃないかと思うぐらい、真っ直ぐに私だけを見て。


その表情は険しく怒って見えたけど、そうじゃなかった。


やっと私を見つけて、安堵していたからなんだ。



「当たり前だろ。何の連絡もないし、携帯繋がらないし、いつもの公園にもいないし。事故にでも遭ったのかと心配になるだろ普通」



皐月は私の首元から、今度は頭のてっぺんにコツンと顎を置いた。


今、こんなこと思うのは違うのかもしれない。
だけど、思わずにはいられなかった。


皐月がこんなに私を心配してくれること。


それが凄く…すっごく、嬉しいって……



「ありがとう…皐月」



今まで宙ぶらりんだった腕を、皐月の背中に回す。


私より大きくて硬くて、だけど細い身体。


人がこんなにも温かいだなんて、ずっと忘れてた。