「ハイお待ち‼︎豚骨ラーメンと餃子ねっ‼︎」



カウンターにドンッと置かれた赤いどんぶり。


もやしが山盛りに盛られ、厚めのチャーシューが四枚。味玉が二切れ。背脂がスープの上を所狭しと泳ぎ、白い熱々の湯気が上がる。



「麺が見えない…」



上が恐ろしくボリューミーで、麺にたどり着くまでには伸びてしまいそうだ。


見てるだけでもうお腹いっぱい。


そう思うのに、お腹はぐぅっと小さな音を鳴らした。



「親父!彩のやつ、チャーシュー多くない?」



すでにもやしを殆ど平らげた洋平が言うと、親父と呼ばれる店主が麺の湯切りをしながらガハハと笑った。



「サービスだ」

「えー!俺には⁉︎」

「お前はいいんだよ!彩ちゃんは痩せ過ぎだ。がっつり食べて体力付けて明日から頑張ってもらわなくちゃ」

「それセクハラだから」

「何言ってんだ。すぐセクハラだ何だって、世知辛い世の中になっちまってよ」



二人の会話と大きな笑い声をキョトンとしながら聞いていると、いつまでも箸を取らない私に「ほら、食べてみなよ。マジ美味いから」と洋平がそれを取ってくれた。



確かに、洋平のどんぶりにはチャーシューは二枚しか入ってない。


壁に貼ってある写真にも同じく二枚。


今気付いたけど、卵も一切れ多いみたいだ。



「あの…ありがとうございます。私、頑張ります」

「良いってことよ」