落ちてきた天使

私の目に真っ先に映ったのは、濃紺のポロシャツ。ボタンが外れた襟元からは鎖骨が見える。


それから徐々に視線を上げていくと、くっきりとした喉仏とシュッとした輪郭。


そして、高い鼻梁と長い睫毛、きりっとした目をした見知らぬ男性の顔が見えた。



状況が上手く飲み込めない。


私、木から落ちて……


そしたら、そう!「危ねぇ‼︎‼︎」って声が聞こえたんだ。


その後すぐ軽い痛みを感じて、今目を開けたら男性が私の下敷きになって「ゔ……」って呻いて………って‼︎‼︎



「きゃあっ‼︎」



混乱する頭のまま、私は男性の上から勢いよく飛び退いた。


男性は痛そうに顔を歪めて後頭部を摩りながら上半身を起こし、私にゆっくりと目を向けた。



「あ……」



真っ黒な力強い瞳と視線が交わった途端、耳に届く全ての音が急に遠くなった。


身体中をビリリと電流が走る。
しっかりと意識を保たないと、呼吸をするのも忘れてしまいそうだ。


呼吸だけじゃない。
油断すると、全てを持って行かれる。


そう直感して、思わずごくりと唾を飲んだ。