落ちてきた天使

片足が枝からズルっと滑った。


咄嗟に手を伸ばしたけど無情にもそれは空を切って、ズザザザーッと大きな音を立てながら落ちていく。



「ーーー、あっ……」


ほんの一瞬、枝葉の隙間から見えた青空。
そして、木漏れ日に思わず声が漏れた。



不思議とゆっくりに感じた。


枝が露出した肌に擦れ刺さっても痛みを感じない。



ああ、このまま終わるのかな。
終わってもいいかもしれない。


この高さから落ちたら、打ち所が悪ければ最悪の事態になるだろう。


そうでなくても、重傷は免れないと思う。


だけど、大好きな人達の元へ行けるなら痛みなんて全然怖くない。



目をそっと閉じる。
思い出すのは一時の幸せだった日々。


そして、私を愛してくれた家族の笑顔。



向こうに行けば、幸せになれるかな。


天国には悲しい別れなんて存在しないはず。


ずっとずっと、大好きな人達と一緒にいられる……



これから訪れるであろう痛みを受け入れる覚悟を決めて、私は風に身を任せた。


だけど。



「危ねぇ‼︎‼︎」



ーーーードサッ‼︎‼︎



地面に激しく落ちたはずなのに、然程痛みは感じない。


それどころか、冷たくて固い土とは思えない程の温かく柔らかな感触がして、恐る恐る目を開けた。