『たまたまそこの高校出身の同級生に会って、まだ持ってるっていうから譲ってもらっただけ』

『たまたま……?もしかして買い物行くって言って、これ取りに行ってたの?』



小さい時からここに住んでるんだから友達や知り合いが多いのはわかる。


だけど、たまたま制服をまだ持ってる同級生に会えるものなの?


卒業してから10年、こんな綺麗な状態で制服を保管している同級生に会うって……そんな偶然ある?



皐月は何も答えない。


疑問が残る中、私は驚きと嬉しさで少し震える手で袋の中からネクタイを取り出した。



『可愛い……』



転入試験の時、初めてここの制服を見て可愛いと思った。


セーラー服も好きだけど、ブレザーもやっぱり素敵。


こんな疲れ切った顔をしてるけど、私は正真正銘の高校生。


可愛い制服を着て高校生ライフを送る、という憧れは普通にある。



正直、前の学校の制服が床抜け事故でボロボロになった時、制服を着ることはもう二度とないと諦めてた。


なのに、今手の中に“それ”がある。


今までの人生の中では殆どあり得ないことだった。


私が望むものが手に入るなんて……




ネクタイを袋の中に戻しつつ、スカートやブレザーもちらっと見る。


どれも本当に綺麗だ。お下がりの物とは思えない。



『あれ?このワイシャツ、新しい…?』



一緒に入っていた透明の袋を引き出すと、ワイシャツにまだタグが付いているのに気付いた。