「なんだよ、嬉しくない?」



流石の皐月も私の素っ気ない態度と返事の数々に違和感を感じたのか怪訝な表情を浮かべた。



そりゃそうだろう。というか、違和感を感じるのがだいぶ遅い。


視線は合わせない。声は小さい。落ち着きがない。


私の胸の内なんて全く知るはずのない皐月にとって、今の私は感じ悪い女にしか見えないはずだ。



…だけど違う。



「嬉しくないわけない」



制服を受け取った時、私は凄く凄く嬉しかった。


また制服を着られる、それが嬉しかったのも勿論そうだけど。


何よりも、皐月の優しさがグッと胸に染みたんだ。





ーーー数日前、転入試験を無事終えると、校長先生と話をする機会があって制服のことを相談した。


卒業まで残り半年。半年といっても三年生の三学期はほとんど自由登校になるから実質登校するのは半年もない。


そんな中、制服を一式揃えるのは経済的に無理だし、そもそも半年も着ないのに勿体無いというのが本音だ。


校長先生は私の家庭環境を考慮した上で、新しい高校の制服は揃えず前の学校の制服でもいいと許可してくれた。


そのお言葉に甘えて、私は前の学校の制服で残り半年を過ごすことを選んだのに、その制服も床抜け事件で着られる状態ではなくなってしまった。


私服で通うことは出来るか転校初日に校長先生に掛け合わないと、と頭を悩ませていた矢先。


昨日、木から降りたら皐月が若干乱暴に袋を押し付けてきて、中にはこの制服が一式が入っていたんだ。



『これ、どうしたの?』



どうして皐月がこれを……?
ただただ驚いて袋の中を凝視するしか出来なかった。