『この、死神っーーーー』



ーーーーっっ……‼︎


勢いよく飛び起きて、視線を左右に彷徨わせる。


学校……じゃ、ない……。


まだ見慣れない天井や壁、照明。布団の感触。
ここは新しい私の部屋で、あの時のクラスメイトはどこにも見当たらない。



「なんだ……夢か」



夢だと理解していくらかホッとすると、額に張り付いた前髪を手で掻き上げた。



「凄い汗……」



まだ少し心臓が騒ついてる。
びっしょりと汗を掻いたから寒気もする。


今日は、長く忙しない休みが明けた月曜日。
新しい学校に初めて登校する日だ。


だからかな。あんな昔の夢を見たのは。



「……起きなきゃ」



私は嫌な夢を見てクタクタな体を起こすと、壁に掛けてあった新しい制服に着替え始めた。



「可愛い……」



全身鏡に映る自分の姿を見つめ頬を緩ませた。


半袖ワイシャツにネイビーとブルー、ライトグレーのストライプのネクタイを結び、それと同じ配色のチェックスカートを履く。


夏はこのスタイルだが、冬はこれに紺のブレザーを羽織る。


今までセーラー服しか着たことがなかったからブレザーは凄く新鮮だ。



今日から始まる学校生活は不安なことばかりだけど、新しい制服に身を包んで、それが幾分か和らいだ気がした。




準備を終えて部屋を出る。リビングのドアを開けると、対面キッチンで皐月が朝食の準備をしていた。


薄いブルーのストライプシャツの袖を捲り、グレーのスラックスを履いたノーネクタイスタイルの皐月。


これがクールビズというやつか。
髪も綺麗にワックスでセットされていて、清潔感溢れ爽やかな印象だ。


かっこいい…


顔が整ってるからっていう理由じゃない。


大人の色気を放ち、余裕と自信が漲っていて目を惹く。魅力的だ。


ドキドキする。
きっとネクタイをビシッと締めたスーツ姿はもっとカッコいいんだろうな…って、想像しそうになったけど自分が変態みたいで止めた。



「皐月って本当に社会人だったんだ」



11歳も離れていれば当たり前のことなんだけど、今日の格好を見て改めて実感する。


昨日何気なくした会話の中で皐月が28歳だと知った。働き盛りのサラリーマンだ。


そんな人が高校生の私なんかを相手にするはずがない。



『彩が欲しい』



あれはただの皐月の意地悪に決まってる。


昨日の皐月の言葉を思い出して、はぁ、と長く息を吐いた。