落ちてきた天使

木の上から町を見下ろす。


町中に大好きなパパとママ、小さかった弟の和也、そして祖父母の面影が残ってる。



例えば、あの赤い三角屋根のパン屋。
昔は普通の一軒家の一階部分がお店だった。


店主のおじさんとおばさんはとても仲が良く、元気で優しくて、お店はいつも賑わっていた。


特にコッペパンやあんぱんが絶品で、三日に一回はママと弟と買いに行っていた。



その向かいにある公園で毎日弟と夕方まで遊んだ。


砂場遊びをしたり、ブランコに乗ったり、自転車の練習をしたり。


時間になるとママが迎えに来て、夕日を背に三人並んで手を繋いで帰ったっけ。



南側に少し視線を移すと、私が小学二年まで通っていた小学校がある。


その数十メートル先に建築士だったパパが設計した庭付きの我が家。


庭には手作りの木のブランコと、ちょっとした家庭菜園が出来る花壇があってミニトマトやオクラなどを育てていた。


あの家は売りに出して今は別の人が住んでいる。


庭のブランコはまだあるようだけど、駐車場にはパパの愛車とは違う真っ黒のワゴン車が停まっている。



もうあそこは私の大好きな家族が住む家じゃない。


当然のことなんだけど、それが凄く寂しい気持ちにさせた。