『彩』と囁くように私を呼ぶ。


火照った頬を掌で撫でながら、何度も何度も。


どうしてそんなに愛おしそうに私の名前を呼ぶの?


さっきキスしたのはどうして?



苦しい…
私の心臓が、私のじゃないみたいだ。



『さっきの答え……教えて?』



無性に聞きたくなった。


この人のことなんて全然知らない。


第一印象は最悪。
人のこと馬鹿にする失礼で無神経な奴だと思った。


でも優しい一面もある。


照れ屋で可愛いところも。


少しだけどそんな松永皐月を見てたら、一概に嫌な奴だって言えなくなってしまった。



だから知りたい。
松永皐月という人間を。



『もう教えただろ?』



そう言って、松永皐月は私の唇を親指でなぞる。


ゾクゾクした。
なぞられた唇が熱い。


キスが答えっていうことだろうか。



『……どういうこと?』

『バーカ』

『ちゃんと言葉にしないとわからないよ』



私が子供だからわからないの?
松永皐月みたいに大人になったらわかること?



もどかしい。
もっとちゃんと言って欲しいのに、大人ってズルい。



『ならずっと考えてろ』



そう言って、松永皐月はふっと口元に笑みを浮かべると、私の前髪を払ってチュッと額にキスを落とした。


そして、畳んであったタオルケットを私に掛けると『おやすみ』と耳元で囁いて寝室を出て行ってしまったーーー。