診察が終わると、待合室の端で皐月が立っていることに気付いた。
「皐月、仕事お疲れ様。迎えに来てくれてありがとう」
「ああ」
「座って待ってれば良かったのに」
「いや、妊婦さんが座れなくなったら困るだろ」
座れなくなったら困るって、席が全部埋まってるわけじゃないのに。
皐月のいつまでたっても変わらない優しい心が嬉しくて、ふふふと笑みが零れた。
「で、どうだった?」
「男の子だって」
大きくなり始めたお腹を摩りながら言うと、皐月は目を見開き、そして嬉しそうに口元を緩ませた。
「そっか……男の子か」
「名前はもう考えてあるの」
「へぇ、何て名前だ?」
「パパみたいに優しい男の子になりますようにって思いを込めて、優月(ゆづき)」
「優月。いい名前だな」
皐月は私のお腹を撫でながら、「優月」と声を掛ける。
優月、あなたのパパはとても優しくて温かい人なんだよ。
パパもママもお姉ちゃんもお祖父ちゃんも、あなたが産まれてくるのを楽しみに待ってるんだよ。
「さ、愛花を迎えに行くか」
「あれ?そういえば何処に?」
「親父とあそこに行ってる」
「あそこ?」
私達は会計を済ませて病院を出ると、歩いて数分の所にあるあの高台の芝生公園へと向かった。
「親父?どうした?」
公園に入ると、お義父さんが上を見上げながら木を登ろうと手や足を幹に掛けているところだった。
「皐月、愛花が降りれなくなった」
「は?あの馬鹿っ!」
皐月は慌てて木の下に走ると、「愛花!」と上を見上げて叫ぶ。
「パーパァ!マーマァ!!!うわーん!!!」
「大丈夫だ。今、助けに行くからーーっ、愛花!!!」
皐月が声を荒げたと同時にガサガサガサ!と大きな音を立てながら木の枝が揺れた。
「きゃあっ!!」
落ちる!!
一瞬心臓が止まった。
思わず目をぎゅっと瞑る。
だけど、次に聞こえてきたのは、愛してやまない愛娘の安心しきった泣き声と。
「天使が落ちてきた」
世界で一番愛する旦那様の優しい声だった。
fin.
「皐月、仕事お疲れ様。迎えに来てくれてありがとう」
「ああ」
「座って待ってれば良かったのに」
「いや、妊婦さんが座れなくなったら困るだろ」
座れなくなったら困るって、席が全部埋まってるわけじゃないのに。
皐月のいつまでたっても変わらない優しい心が嬉しくて、ふふふと笑みが零れた。
「で、どうだった?」
「男の子だって」
大きくなり始めたお腹を摩りながら言うと、皐月は目を見開き、そして嬉しそうに口元を緩ませた。
「そっか……男の子か」
「名前はもう考えてあるの」
「へぇ、何て名前だ?」
「パパみたいに優しい男の子になりますようにって思いを込めて、優月(ゆづき)」
「優月。いい名前だな」
皐月は私のお腹を撫でながら、「優月」と声を掛ける。
優月、あなたのパパはとても優しくて温かい人なんだよ。
パパもママもお姉ちゃんもお祖父ちゃんも、あなたが産まれてくるのを楽しみに待ってるんだよ。
「さ、愛花を迎えに行くか」
「あれ?そういえば何処に?」
「親父とあそこに行ってる」
「あそこ?」
私達は会計を済ませて病院を出ると、歩いて数分の所にあるあの高台の芝生公園へと向かった。
「親父?どうした?」
公園に入ると、お義父さんが上を見上げながら木を登ろうと手や足を幹に掛けているところだった。
「皐月、愛花が降りれなくなった」
「は?あの馬鹿っ!」
皐月は慌てて木の下に走ると、「愛花!」と上を見上げて叫ぶ。
「パーパァ!マーマァ!!!うわーん!!!」
「大丈夫だ。今、助けに行くからーーっ、愛花!!!」
皐月が声を荒げたと同時にガサガサガサ!と大きな音を立てながら木の枝が揺れた。
「きゃあっ!!」
落ちる!!
一瞬心臓が止まった。
思わず目をぎゅっと瞑る。
だけど、次に聞こえてきたのは、愛してやまない愛娘の安心しきった泣き声と。
「天使が落ちてきた」
世界で一番愛する旦那様の優しい声だった。
fin.

