「え……」



なんで私が孫だってわかったんだろう。
一度も来たことも連絡したこともないのに……


ちらりとおじいちゃんが寝てるベッドに目を向けた。

だけど、何かの機械がベッド脇に置いてあって、私の位置からでは顔が見えなかった。



「ふふふ。ごめんなさい。私、担当の鈴井です。驚いたわよね。幹二さんによく写真を見せてもらってたから、初めて会った気がしなくて、つい」

「え?写真?」



どうしておじいちゃんが私の写真を?


驚く私を余所に、鈴井さんはベッドに横たわるおじいちゃんの手をぽんぽんっと軽く叩きながら「幹二さん」と呼び掛けると、耳元にやや顔を寄せた。



「お孫さんが会いに来てくれましたよ」

「ぁあ?誰だって?」



あ……
おじいちゃんだ……

耳が遠いいのか、少し乱暴な言い方になってるけど。

間違いない、あの声は大好きなおじいちゃんの声だ。



「おじい…ちゃん……」



数年ぶりに聞くその声に細胞が震えた。


唯一の肉親。
私と血の繋がった家族。

私の…おじいちゃん……



「お孫さんよ。彩ちゃん!よく写真見せてくれてるでしょう?」



すぐに返ってこないおじいちゃんの声に緊張が増した。

ドクドクと、鼓動が速い。


怖いのと、もしかしたら覚えてくれてるのかもしれないっていう期待が入り混じった緊張感に、耐え切れず両手をギュッと握った時。



「彩…?」



確かに私の名前をはっきりと言葉にした。


鼻の奥がツンとして、眉間に皺を寄せる。
だけど、視界は滲むばかり。



「どこにおる?」

「ここにいるわよ」



鈴井さんが私を手招きしながら言う。

私は小刻みに震える膝にしっかりと力を入れながら、半歩ずつ、だけど着実におじいちゃんのベッドの足元まで歩いた。



「お、おじいちゃん……?」



はっきり見えた顔に、涙が溢れそうになった。


数年前より白髪か増え、痩せて皺が寄り、頬に沁みが見える。

だけど、目も薄い唇も、薄っすら見せた笑顔も、何も変わってない。


私の大好きなおじいちゃんのままだ。